トリマーの眼!

凄腕トリマーによるペットに関するコラム
大人気!第14回は…【武豊騎手に学ぶ】

先日、久しぶりにテレビを見ていたら、私の大好きな騎手の武豊さんが競走馬との上手なコンタクトのとり方について、とても興味深いお話をされていました。武さんといえば、JRAの最多勝利騎手(JRAリーディングジョッキー)の称号を過去18度も獲得されている天才ジョッキーとしてあまりにも有名ですが、その武さんが日頃から馬に乗る際に、特に気を付けていることは「たとえ馬たちがすぐには思うように動いてくれなかったとしても、そこでは決して焦らず、じっくりとその馬の個性(適性)を見極めながら、少しずつやる気を引き出していくような乗り方をする。」ということなのだそうです。
例えば、イソップ童話に出てくる「北風と太陽」のお話の中にもあるように、北風が旅人に冷たく厳しい態度で接したような強引な対応よりも、太陽のように温かく穏やかな態度で接するほうが、実は相手は自然と心を開き、更にはこちらの言い分も少しずつ耳を傾けてくれるようになるという、我々が実社会を生き抜いていく上でとても大切な教訓を武さんは私たちに伝えてくれているようにも思えてきました。(そういえば、お釈迦様のお言葉で「人を見て法を説け」という諺がありますが、やはりお馬さんの場合でもそれは当てはまるのでしょうか?(笑))
更に武さんは、例えば馬たちを左の方向へ誘導したい場合には、決して「左に行け!」などと手綱を強く引っぱったりはせずに、「ここは左へ行った方がいいと思うよ。」とそっと心の中でつぶやきながら、(手先だけではなく)全身を使ってやさしく馬たちに合図を送るのだそうです。私はそれを聞いて、私達トリマーがワンちゃんやネコちゃんたちとコンタクトを取る際に心掛けている点ととてもよく似ているなとつくづく感じ入りました。
私は、これまでトリマーの卵である二十歳前後の生徒や研修生、更には従業員など様々な若者たちを見てきましたが、まだ、経験が浅くワンちゃんたちにどう接していいのかわからない生徒たちは、何とかじっとしてほしいという願いから無意識に肩に力が入ってしまい、時にそのことでワンちゃんたちを緊張させてしまうこともありました。ですからそんな時、私は「決して押さえようとしたり引っ張ったりはせず、まずは、あなた達自身の肩の力を抜いて、逆にワンちゃんたちが行こうとする方向へほんの少しだけそっとやさしく押してあげてごらん、そうすると、ほらっ、びっくりするほどこの子たちがリラックスしてくれるでしょ(笑)。」といつも伝えてきたのです。
そういえば、飼い主さん方からもよく「ワンちゃんの躾がなかなかうまくいかなくて困っている。」というお話を耳にすることがあります。そして、あまりにも言うことを聞いてくれないので、遠方の著名なドッグトレーナーさんの所へ暫く預けたいと言われる方も中にはいらっしゃるのですが、具体的にお話を聞いてみると、そのほとんどの場合、ドッグトレーナーさんの所で暫くトレーニングを受けなくてはいけないのは、実はワンちゃん達ではなく飼い主さんのほうだと言えそうです。(苦笑)
もちろん、これまでの意識をすぐに180度変えるというのは、決して口で言うほど簡単なことではないはずですが、それでもそのことを十分に心に留めたうえで、武豊さんの馬たちに対する温かく思いやりのある、まさに「馬を見て法を説く!」(笑)というような「太陽のような接し方」を私自身、これから少しでも見習っていけたらいいなと改めて考えさせられたのでした。

mametaro.jpg
前田 勉
2002年、福岡市博多区でJKC公認トリマー資格取得。2003年、地元である大分県中津市で「まめたろうペットホテル&トリミング」を開業。以来「ワンちゃんが、ホッと安心してくれるトリミングの方法があります。」をキャッチフレーズに、多くのワンちゃんたちの幸せと健康のサポートに努め、飼い主さんからは「まめたろう先生」と呼ばれ親しまれています。常識にとらわれない、やさしく丁寧なトリミングの方法は、今も進化を続けており、多くのファンから支持されています。趣味は、読書、乗馬。