トリマーの眼!

凄腕トリマーによるペットに関するコラム
大人気!第10回は…【大棋士 藤沢秀行の魅力】

今から十数年前、囲碁を題材としたマンガ「ヒカルの碁」が週刊少年ジャンプで連載され子供たちの間では、にわかに囲碁ブームが巻き起こりましたが、現在でも囲碁は右脳を鍛えるゲームということで中津市内の私の知り合いの子供達もまた近所の囲碁教室に熱心に通っているそうです。
そんな囲碁の世界で長年にわたって活躍されたプロ棋士で、2009年に満83歳で亡くなられた藤沢秀行名誉棋聖がおられます。(以下、秀行(しゅうこう)先生)
秀行先生は主要棋戦優勝及び七大タイトル獲得の合計数が23と誰もが認める大棋士ですが、実は、中国、韓国をはじめとして国内外の若手棋士たちへの熱心な指導ぶりでも大変有名でした。しかしその結果、自らが保持していたタイトルを手塩に掛けて育てた弟子たちに次々と奪われることにも繋がり、その結果、周囲からは「秀行はバカだ」と笑われたといいます。しかし、それを聞いた秀行先生は、「弟子が強くなるなら、自分もそれ以上に強くなればいい。己を磨くためにライバルを育てているんだ!」と言い放ったそうです。
このエピソードには、実は私自身、ちょっぴり思い当たるところがあります。それは私が開業以来、獣医学を個人的に教えて頂いていた獣医師の先生のご紹介で、トリマー見習い(弟子)を一人受け入れることとなり、私のもとで修行することが決った時の事です。それまで他の職場でつらい目に遭い、技術的にも伸び悩んでいた彼女は精神的にもとても落ち込んでいるようでした。しかし、私の所へ来て暫くすると、少しずつ顔色もよくなり次第に表情に明るさが出てきたのです。そして
その後、私の決してやさしくはない?(笑)指導にも何とか耐え、後に彼女は独立開業をも果たしています。これだけ話しますと、なんだか弟子だけが一方的に得をしたように聞こえるかもしれませんが、実は、弟子を指導することによって私自身にも「基本を再確認できる!」という大変なメリットがあり、トリミングの正確さと手際の良さはそれまでとは比べ物にならないほど上達したことを実感できたのでした。
人間には誰しも自我というものがあり、それまで孤独に耐え一生懸命工夫して身につけてきた知識や経験は、簡単には人に教えたくないという感情が起こるほうがむしろ自然なことだと思います。しかし、先の秀行先生は自分の仕事に対して常識や偏見にとらわれない美しい心で努力を続けて行くならば、結果は考える必要さえない!ということを私たちに教えて下さっているように思えてなりません。
現にその後、秀行先生は66歳という史上最高齢で王座のタイトルを獲得し、その翌年もまた防衛するという超人的な離れ業まで成し遂げられています。私生活では、あまり見習ってはいけないエピソード?も沢山お持ちだったようですが(笑)、それに余りある愛嬌と素敵な魅力があって、特に私はそんな秀行先生の美しい心が大好きなのです(笑)。

次回は、「サックス4兄弟」です。お楽しみに!

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前田 勉
2002年、福岡市博多区でJKC公認トリマー資格取得。2003年、地元である大分県中津市で「まめたろうペットホテル&トリミング」を開業。以来「ワンちゃんが、ホッと安心してくれるトリミングの方法があります。」をキャッチフレーズに、多くのワンちゃんたちの幸せと健康のサポートに努め、飼い主さんからは「まめたろう先生」と呼ばれ親しまれています。常識にとらわれない、やさしく丁寧なトリミングの方法は、今も進化を続けており、多くのファンから支持されています。趣味は、読書、乗馬。