トリマーの眼!

凄腕トリマーによるペットに関するコラム
がんばれ、チビスケ!

「チビちゃんを、よろしくお願い致します。」
「大丈夫ですよ。それよりも、早く元気になってくださいね。」
これが、私がペットホテルでお預かりした、チワワのチビスケの飼い主であるTさんと交わした最後の言葉でした。Tさんは、まだ50代半ばの女性の方で、ここ数年は体調を崩して人工透析をされていると聞いてはいましたが、私は、この連絡から、まさか2日後にTさんが亡くなられるとは、その時、夢にも思っていませんでした。1人暮らしのTさんは、チビスケだけが心のよりどころで、本当に目の中に入れても痛くないというほどの可愛がりようでしたので、私は、いつも微笑ましく思っていました。それだけに、あの時はきっと自分の死期を悟り、入院中の病床から気力を振り絞って、私のもとへ連絡されたに違いありません。
 実は、このTさんには、関東在住の実の兄妹が2人いたのですが、犬のことには関心がないようで、Tさんが亡くなられると、すぐに私のところへやってきて、「こんな犬を姉が飼っているとは知らなかった。新しい飼い主を見つけられないのなら、今から保健所に連れて行くから、すぐに引き渡すように!」と強い口調で言うのです。私は、まさかTさんの兄妹がこのような態度に出るなどとは、これまた夢にも思っていませんでしたので、本当にあきれて言葉も見つかりませんでしたが、それでも気を取り直して一言だけ、こう言いました。
「どうぞ、お帰りください。」と。
 なぜ、私が、そう言うにとどめたのかといいますと、法律的に言えば、チビスケの親権(所有権)は、すでに亡くなっているとはいえ、Tさんと、その親族である兄妹にあると、その時とっさに判断したからです。全国的にみても、これほどひどいケースは稀だとは思いますが、飼い主さんが病気や高齢化などで先立たれたために、家族同様に大切にされてきたワンちゃんたちが、路頭に迷うというケースは、近年、深刻な社会問題にまでなってきています。
 幸いにも、のちに、チビスケにはワンちゃんに理解のあるやさしい飼い主さんが見つかりましたので、今は幸せに暮らしていますが、チビスケをはじめ、そのような境遇にあるワンちゃんたちが、はじめに飼われていた環境となるべく近いかたちで生活できるような、そんな社会が一日でも早く実現してほしいと願わずにはいられません。

次回は【口臭は、万病のもと?】です。お楽しみに!
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前田 勉
2002年、福岡市博多区でJKC公認トリマー資格取得。2003年、地元である大分県中津市で「まめたろうペットホテル&トリミング」を開業。以来「ワンちゃんが、ホッと安心してくれるトリミングの方法があります。」をキャッチフレーズに、多くのワンちゃんたちの幸せと健康のサポートに努め、飼い主さんからは「まめたろう先生」と呼ばれ親しまれています。常識にとらわれない、やさしく丁寧なトリミングの方法は、今も進化を続けており、多くのファンから支持されています。趣味は、読書、乗馬。